ホルスト・ヤンセン画集紹介(1)
ボベタニアンはヤンセンの造語。
「ボベツの風景」という意味か。
1990年5月、ヤンセンは61歳の時、自宅のベランダごと崩落、
エッチング用の硝酸の飛沫が目にかかるという事故に遭う。
著しく目に損傷を負ったヤンセンが、同年9月から、制作した107の風景画、それが、
「ボベタニアン」と呼ばれるシリーズ。
1頁目 ヘイドラン・ボベツと刻まれている。当時の可愛い恋人の名。
絡み合う樹木をインクや水彩絵の具、鉛筆で描く。
希望と諦めの言葉が所々に挟み込まれる、
ぺージをめくるごとに映し出されてゆくヤンセンの心の風景。
画面の中に、日付とともにあるのは「もう生きたくない」「終わらない」「老人は風景を夢見る」「葉がひっくり返ったとき」「ホラーの後で」などの言葉。
溢れ出る情熱を受け止めたのは8割方、紙舗 直の手漉き紙。極薄の紙(86)、柿渋の紙(5)、破れた紙(37)、店主坂本からの手紙の裏(25)等々。(括弧の数字は作品番号)
1990年9月13日から12月31日までの間に書かれた107作。
紙の厚み、サイズ、縦横のプロポーションは様々、107の風景は107の情熱。
ホルスト・ヤンセン画集、心が熱くなる一冊です。
画集名 BOBETHANIEN(ボベタニアン)
発 行 1991年
サイズ 32×43.5cm
価 格 20,000円